創生期から強豪を輩出してきた福岡支部
福岡支部はボートレース界において創生期の頃から強豪を輩出してきた。昭和なら〝先生〟こと岡本義則、〝博多ん大将〟松田雅文、〝天才〟高山秀則、〝無冠の帝王〟荘林幸輝、平成ならもちろん〝艇王〟植木通彦で、現役でも瓜生正義、元志と仁志の篠崎兄弟、岡崎恭裕、羽野直也とSGウイナーのスターレーサーを多数輩出。脈々と強豪のDNAが受け継がれ、ボートレースの歴史を彩ってきている。
前述した羽野とともに福岡のスターレーサーの系譜を継ごうとしているのが新開航。一昨年に地元芦屋のGⅡモーターボート大賞で特別戦初制覇を飾り年間10Vを決めると、昨年はさらに勢いが加速。プレミアムGⅠのヤングダービーを皮切りにGⅠ戦線で優出ラッシュ。常滑のダイヤモンドカップではGⅠ初V、敗れたとはいえ蒲郡のSGダービーでは準優勝戦1号艇を獲得と着実にスターの階段を駆け上がりつつある。「やっぱり一年で10回も優勝できた2年前から変わったと思います。自分の中で何かを変えたわけではないけど、それまでに積み重ねてきたことがしっかり結果に出だした感覚があります」
敗戦から感じた課題
新開の目標はSGやGⅠに出続ける選手になること。その思いこそ過去の名レーサーに通ずるものである。「もちろんSGは勝ちたいけど、一発屋では終わりたくない。今はGⅠにも呼ばれる機会が増えて自分の理想に少し近づいてはいるけど、まだまだですね」。一昨年の結果を受けてSG戦線にも顔を出すようになった。昨年に常滑でGⅠを勝てたことは、「すごく自信になった」と言うが、やはりSGは全く別物だとも感じている。「常滑のGⅠの優勝戦1号艇は全く緊張しなかったけど、蒲郡のダービーの準優1号艇は緊張しまくっていつものターンが全くできなかった。お客さんの数も舟券の売り上げも違ってプレッシャーを感じていたんだと思います。」
SGで準優1号艇を獲得するほどの活躍を見せても慢心はない。「GⅠ以上のレースはみんなうまいから、一般戦と違って展開はセオリー通りになりやすい。だからこそ、突き抜けた旋回力と整備力を持たないと安定した成績は残せない。ターンでミスせず、調整をロスせず無駄のないレースをできなければいけないですね」。敗戦から学ぶことは多く、自らが目標とするSG常連となるために何が必要かも負けたからこそ見えている。
系譜に名を連ねる覚悟
福岡支部の強豪の系譜に名を連ねる覚悟もできつつある。やはり同世代でデビュー当初から派手な実績を残す羽野直也や仲谷颯仁の存在は新開の中でも大きい。「羽野さんの次ぐらいの立ち位置でいいんですけどね(笑)」とおどけるが、「期が近くて目標になる選手がいるのはありがたいし、心強いです。SGやGⅠでも一緒だと精神的にも落ち着いていられるので」と3人でいることの相乗効果は計り知れない。
それだけではない。生涯の伴侶を得たことで大黒柱としての覚悟も芽生えている。「気持ちに余裕ができてきたし、妻のおかげでオンオフの切り替えがうまくできるようになりましたね。休みの日は仕事のことを完全に忘れるようになって、逆に成績も上がってきましたから」。公営競技が盛んな飯塚市出身ながらボートレースもオートレースも、「全く知らなかった。収入の良さに惹かれて目指しただけでした」というが、今の活躍を見れば〝天職〟なのは間違いない。福岡支部の強豪列伝に〝新開航〟の名を刻むべく、覚悟を持って走り続ける。