
また一人福岡からスターが誕生しようとしている。その名は米丸乃絵。2026前期勝率は自己最高勝率となる6.61をマークしてA1級に初昇格。2026年のトップルーキーに福岡支部から唯一選出されて、今後はSG、GⅠ戦線での活躍も期待されるが、ここまでの道のりはそこまで簡単なものではなかった。米丸は128期生だが養成所時代は、コロナ禍の真っただ中。養成所の課程で訓練生が最も伸びるとされる現役選手を招いての選手招聘訓練がコロナ禍で中止となり、通常とは違うカリキュラムでデビューを迎えることに。「私たちは本当にレベルが低かったと思います。いきなりプロの先輩達の中に放り出されて、あまりのレベルの差に途方に暮れていました」
ただデビュー当初に米丸は運命的な出会いをする。それが94期生の永田啓二。「永田さんと一緒になった時にレースを見て指導してくださいと頼んだら、『今の米丸のレースを見て何を教えればいいの?ただ6コースから何もせずにただターンしただけのレースに何も言うことはないよ』と。あまりにも厳しくて泣きました(笑)」。ただその言葉が胸に刺さったのも事実。「永田さんの言うとおりです。思い切って握って攻めた訳でもなく、ただターンをしただけ。それが分かった時に、『この人に教えてもらいたい』、『この人に教えてもらえれば強くなれる』と感じました。そこからは何度も何度もお願いして弟子にして頂きました」米丸の予感が正しかったのは今の成績が示すとおり。河野真也、楠原正剛、渡邉優美と、指導した選手を全てA級に育てた若き名伯楽の指導でメキメキと実力を付けていく。「永田さんの教えの基本はとにかく猛練習して、『Fを切らない早いスタート(S)』、『旋回力』を身につけること。もちろんプロペラ調整も同時並行でいっぱいやるんですけど、エンジンはいつも出る訳じゃないのでSとターンで勝てる選手になることを叩き込まれました」。
ただ、そんな米丸でも苦しんだのがF禍。昨年の華々しい活躍も、本来ならもっと前に見せなければならない姿だった。「永田さんからは今のA1は計画より2年遅いと言われました。以前は『Sが早い。危ない』と思っても放れなくて…。Fを切るとせっかく積み重ねた感覚がなくなって実戦に復帰する。これを繰り返したことで成績を思ったように伸ばせていませんでした」。だからこそ2025年に取り組んだのがS力の強化。「永田さんからずっと言われていた『Fを切らない早いスタート(S)』を行くというのを少しは実践できました。永田さんは平均Sが0.12~13とすごく早いのに1000走以上も無事故。自分もこのレベルに到達できれば、もっと成績を上げられると感じています」当面の目標はデビュー初V。昨年は優勝戦1号艇を3回も勝ち取りながら全て敗れてしまったが、最も悔しかったのが7月の福岡での一戦だった。「特に福岡はフレッシュルーキーにも選んでもらったレース場なので本当に悔しくて…」。とはいえこの一戦が大きな糧になっているのは間違いない。「私は負けた理由を〝メンタルの弱さ〟だと思ったんですが、永田さんからは『気合を入れただけで勝てるほどプロは甘くない。負ける時は必ず技術的な部分に理由がある。負けた理由をメンタルに求めたら成長しないよ』って。いかに自分が甘いかを痛感させられました」
昨年に初めてクイーンズクライマックスシリーズに出場したことも、大きな契機になっている。「やっぱりクイーンズクライマックスの12人に残りたいですね。昨年はシリーズの方に出たけど、あの場所にいたからこそ向こうに出たいなって思いました」。A1になれたから、トップルーキーになれたからと浮かれる様子はみじんもない。これこそが米丸の今後の大きな飛躍を予感させる。「いつかはSGに出られる選手になりたい。SGに出ようと思ったら、S力も旋回力も調整力も全てがまだまだです。浮かれているヒマはないし、正直言って不安しかない。その不安を打ち消すためにも、今まで以上にいっぱい練習してもっともっと強くなりたいです」。5000番台の男子は末永和也、定松勇樹がSG、GⅠを制しているが、5000番台の女子はまだ未到達。米丸の日々の努力があれば、5000番台の女子のパイオニアになる日は遠くない。