福岡支部のニュースター
強豪があまたひしめく福岡支部に彗星(すいせい)のごとく現れたニュースター。羽野直也を表す言葉としては、最もふさわしいフレーズだろう。
特に2017年は5月のゴールデンウイーク戦(芦屋)で1号艇の瓜生正義を撃破すると、ここから出世のスピードが急加速。半年後にG1(大村開設65周年記念)を勝つとは誰も予想できなかった。1期下の仲谷颯仁との〝超〟が付くハイレベルな最優秀新人争いも語り草だ。
2017年の勢いをもってすれば、2018年はSGタイトルはもちろん、年末のグランプリ出場も期待された。しかし、そんなシンデレラストーリーはもろくも崩れ去る。
低出力型でも黒ホイール型と呼ばれる2017年後半から仕様が変わった新エンジンが羽野の前に立ちはだかった。「初期の低出力型のエンジンなら、プロペラ調整は最先端でした。自分のゲージに合わせさえすれば、どこでもエンジンは出ていた。それが急に全く出なくなって…。原因も分からなくて、迷いがありましたね。ペラ調整の自信は完全に失いました」
羽野直也の真骨頂
どのレース場でも面白いように勝てていたのが急に勝てなくなる。全場が現タイプのエンジンに切り替わると、2017年の勢いは完全に止まった。
2019年後期適用勝率の選考期間(昨年11月~今年4月)はSGやG1を勝つどころかA1級キープにさえ苦しんだ。当然、周囲は羽野をスランプと呼んだ。
ただ、本人の思いは違った。「苦しい中でもG1で何回も優出できていたし、これをスランプと言ってもらえるのなら、自分の実力は認めてもらえている。逆に自信になったし、ありがたいと思いました」。
苦しい中でも、しっかり前を向くのは羽野の真骨頂。諦めることも腐ることもせず、自らの成長だけを見据えていた。「意識してターンを磨きました。SGやG1でも勝てるだけのレベルだと思うし、旋回はうまくなっている自信があります。テクニックは誰にも負けていない」。
ペラ調整の自信は失ったが、旋回の自信は深まった。苦難の時期を過ごしたからこそ、手に入れられた新たな武器。羽野は決して後退なんかしていない。
SG第46回ボートレースオールスターに向けて
地元で開催される今回のオールスターを、今か今かと心待ちにしている。
「やれる準備はしてきたし、エンジンがうまくはまれば勝てる自信はあります。今の自分は上向くしかないから楽しみしかない。昨年と違って今年はまだ〝年末〟が見えない状況だけど、この福岡で見えるようにしたい」。
ボート王国と呼ばれる福岡支部だが、篠崎元志以降、新たなSGウイナーが出ていないのも紛れもない事実。そんなことも、このニューヒーローは百も承知だ。
「福岡で次のSGウイナーになるのは自分。そう思っています」。2018年はさらに高くジャンプするための準備期間。平成の終わりに現れたニューヒーローが、令和の大スターとなるべく歩みを進める。