夢を掴みかけたSG優勝戦
2000年11月の芦屋でボートレーサー人生を歩み出して約24年。GⅠタイトルを含めて通算36度のVを重ねるなど、福岡屈指の実力者としてこれまで数々の好勝負を演じてきた。「GⅠ優勝もできたし色んなことがありましたね。その中でもここでSGの優勝戦1号艇で乗れたあの時が自分のターニングポイントでした」としみじみと振り返ったのが2011年に福岡で開催されたSGモーターボート記念競走(現・ボートレースメモリアル)。
初戦の6枠をコンマ00のタッチSから白星を飾り勢いに乗ると、その後も快進撃は止まらず、SG初優出にして優勝戦の1号艇をゲット。一気にスターダムを駆け上がる絶好のチャンスだったが、待っていたのは無念のFコール。「あそこで勝っていたらまた全然違っていたでしょうね。今考えるとまだまだ実力不足だったと思います」。まさに天国と地獄。あの勇み足以降、大舞台から遠のいている。
息子のデビューが大きな刺激に
あれから13年。短く刈り込んだ頭にひげを蓄え、ワイルドな姿に変貌を遂げたが「若い頃とやっていることは変わらないし、気持ち的にもぶれていない」と穏やかに話す表情は当時と一切変わらない。一方で大きく変わったことがある。それは愛息の孝成が133期で昨年11月にデビューを果たした。「いい刺激をもらっていますよ。教えることで自分自身が考えることもありますから。変なレースもできないですしね(笑)」と頬を緩ませる。
長らく遠ざかっていたA1にも復帰し、2期連続でA1をキープ。父親として、そしてレーサーとして、しっかり背中で示している。「まだ親目線ですね。心配の方が大きいです。技術は後から付いてくると思うので、まずは新人のやるべきこととか、人としてのことをやってもらいたい」と同じ土俵で戦う息子へエールを送る。
大舞台への熱い思い
もちろん、自身も熱い思いは消えていない。「近いところで言えばまずはA1キープですかね。勝率で言えば7点を取りたいですね、できることなら。SGに行くなら優勝回数や勝率だったり。大舞台への気持ちはあります」と熱い気持ちを吐露。2015年~2022年は毎年1回の優勝ペースだったが、今年は3月のからつ、6月の桐生・江戸川、9月のからつと4V。久々の大舞台への出場を射程圏に入れる。その為には「まずは目の前の一走一走をしっかり走る」とこれまで同様、一走入魂の姿勢は変わらない。
9月1日の福岡1Rでは孝成が待望のデビュー初1着。水神祭後に「いつかは父を越えられるように頑張りたい」と喜びとともに意気込みを語っていた。「孝成が出てきて教えたりして、自分が吸収することもありますからね。親子で切磋琢磨しながら、ですね。走れる限りは頑張りますよ」。親子でもあり、同士でもあり、そしてライバルでもあり。いずれは上の舞台で真剣勝負する姿を心待ちにしている。