最初は伸びを求めていなかった
中辻崇人は伸び重視のスタイルを築いた。チルトは「0」、「0.5」を選択。直線を追求することで、2023年は優勝5回(8月17日現在)。自身を支えてきた「伸び」の原点に迫る。「結果だけ見ると、いいですね。常に伸び寄りのセッティングを試しています。それから、うまくいくことが多くなりました。チルトマイナスはないです」最初から伸びを意識した訳ではなかった。長い間、A1級をキープしたが、一時は絶不調期があった。2020年前期にはA2級を1期だけ経験した。出足重視の調整を変えるきっかけとなった。
「回転が上がらなくなることが多くなった。伸びではなく、回転を上げるためにチルトを跳ねました。それが最初です」その調整が、しっくり来るようになった。伸び重視への転換につながる。「こういうパターンもありかなと。幅が広がればいいな、という考えでした」2020年後期にはA1級に復帰。その後はコンスタントに優出できる立場に戻った。
うねりは気になる
福岡水面では好結果を残している。8月の恒例「お盆特選レース」の優勝戦では4カドから、まくり差しを決めて優勝を飾ったばかりだ。「結果は割と出せている水面だと思います。苦手ではないですけど、やっぱり、怖いですね。うねりは気になります」福岡だけで通算5回目のVとなった。過去には当地10節連続で優出するなど、ドル箱水面だ。それでも、うねりに対する恐怖心が薄らぐことはなかった。
「ある程度、何かあることを想定して乗っています。他のレース場とは握り方など違います。安心して乗っていても、何があるか分からない」走り慣れた自信よりも、警戒心、集中力の方が上回っていた。「福岡では慌てないこと、落ち着いて乗ることを心がけています。それが一番大事です」レース前の自身への言い聞かせは、癖のある水面での好結果に繋がっている。
A1級を長く続けたい
40代という壁にも挑む。体重管理の難しさも出てきた。40代半ばを超えて、結論を得た。「体重管理はレース場でなく、家でするものだと思いました。それに(体重という)数字ではないですよ。体重よりも体調というイメージです」特にこだわっている栄養素もある。「カロリー以上に、年々、筋肉の衰えも考えるようになりました。今はタンパク質を意識しています」
「伸び」「落ち着いた対応」「体調管理」。この3つを含めた要素が今の中辻の姿へと導いている。さて今後の目標は何なのか?「まずA1級を長く続けたいですね」謙虚ながらも常に上位へのこだわりをのぞかせた。一時的なスランプを味わった悔しさもある。同時に1つの教訓も教わった。「調子がいいときは、秘訣や理由はないです。でも、不調に陥った時は、必ず理由があります。その部分を意識しながら、ボートレーサーを続けたいです」苦難を乗り越えた今、充実期を長く続ける土壌は整いつつある。