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選手クローズアップ

成長への手応えと新たな課題

2022年は年間100勝超え。優出は17回を数え、内8回を優勝に結び付けた。10月には全レーサーの憧れであるダービー(とこなめ)に出場。初戦でSG水神祭を飾り、見事に予選を突破した。本人も成長への確かな手応えを感じている。「エンジン出しですね。(機歴や素性が)普通のエンジンは普通以上に、ダメなエンジンでも普通くらいには出せるようになった」
一方で新たな課題も見えてきたという。「いいエンジンを突き抜けた足にできていないということです。同期の菅章哉に伸び仕様のペラを教わって試したこともありました。もちろん伸びていくんだけど、あのペラだと1Mで決めなきゃいけない。僕は6回のターンマークすべてで勝負したいタイプ。なので自分には合わないな、と。(スタートをするときの)行き足でもっとパンチをつけられたらいいんですけどね」

強化ポイントはエンジン出しとスタート

現状で満足することなく、さらなる高みを目指す決意。自己改革のきっかけとなったのはダービー出走が現実的な目標となったことだった。「高いレベルで結果を出すには他と一緒ではダメ。旋回力やレース運び、地力の差があるから勝負にならない。良くて準優までです。それに自分は記念レースの常連ではないので出走機会が限られている。その中で結果を出さなきゃいけない。」
エンジン出し同様に重要な強化ポイントと位置付けるのがスタートだ。しかしこれまでのS事故はわずかに4回(F3回、L1回)。過去10年以上フライングをしておらず現役屈指の安定度に思えるのだが・・・「全然ですね。もちろん(Fを)切っちゃダメですよ。それは大前提。でも自分のように平均STが15なら、単にFが少ない選手ってだけ。15を行く選手なんて今はたくさんいます。でもこれが12になると凄い。ゼロ台を何回も行かないと、この平均にはならない。もちろん質もあります。結果的に(Sを)放らなくて良かったと思うことの方が多い。エンジンを出して行き足をつけて、もっと早いタイミングの景色をつかみたい。そうすれば全速で行ける。そこを目指しています」

悲劇と向き合う

昨年はいいことばかりではなかった。11月6日に愛弟子の中田達也さんがレース中の事故で急逝。危険と隣り合わせの職業ではあるが、塩田にとっても大きな衝撃だった。「ただただ寂しいです。今は気持ちが沈んだり戻ったり上下している感じ。達也とは年も近くてプライベートでも良く遊んでいた。仕事についても教えるというよりは一緒に頑張ってきたという思いが強い。兄弟のような間柄でした。でも、これって振り切れるものじゃなくて一生寂しいんだと思う。だから向き合っていくしかないと思っています。それにグズグズしていたら達也に笑われますからね」
昨年12月、福岡ボートで行われたGⅢソフトバンクホークス杯で優勝。レース後には「走る時は達也と一緒に走っているつもりで僕は走っている」と決意を語った。悲劇と向き合うことが乗り越えるきっかけになるかもしれない。2人分の思いを胸に塩田は水面に向かい続ける。